Q: スケジュールやプレッシャがきつく上司も高圧的で,強いストレスを感じています。この先同じ様なストレスを受けたとき,乗り切れるのかとても不安です。

 現在,自分には未経験で難しい作業を任されています。スケジュールやプレッシャがきつい上に,上司も高圧的で,強いストレスを感じています。この状況で続けていく自信がなく,他の上司にプロジェクトから抜けたいと相談しました。現在その方向に向かっていますが,それが甘えなのかどうか分かりません。あと,自分はこの先同じ様なストレスを受けたとき,乗り切ってやっていけるのかがとても不安です。
(SE/男性・29歳)

A: ポジティブ思考で「悪魔のスパイラル」から抜け出せ!

 あなたが現在のプロジェクトから抜けるのは甘えでしょう。また,このままではこの先同様なプレッシャーがきたら,きっと乗り切れないでしょう。

 あなたはエンジニアがはまる「悪魔のスパイラル」にいるのです(図1)。

図1●エンジニアの悪魔のスパイラル
図1●エンジニアの悪魔のスパイラル

 まず,あなたは自分に自信がないのです。だから未経験で難しい作業が怖いのです。つまりチャレンジできない。エンジニアは常にレベルの高い仕事にチャレンジしなければスキルが向上しません。スキルが向上せず,しかも肝心な時に逃げ腰なのでは,どんな上司でも頭にきます。

 多分,あなたのように自信のない方には,普通の方にとっては当たり前の上司のプレッシャも,強いストレスに感じるのでしょう。そしてあなたはそんな現実から逃避してしまう。結局,あなたにはスキルも仲間からの信頼感も残らず,自信はますます低下していって,次の仕事でも同じことを繰り返すことになります。

 この「悪魔のスパイラル」に陥っているのは,あなただけではありません。実に多くの若手エンジニアがこのような状況にあり,結果として「うつ病」になっています。

 さて,あなたがこのスパイラルから抜け出るには,「ポジティブ思考」を身につけるのが肝心です。禅寺にこもって精神修行をするのもよいかもしれませんが,何よりも大事なのは逃げないことです(図2)。つまり,

・「こんなものさ」と開き直りとにかく歯を食いしばってでも仕事をする
・「自分はできる」と自分に言い聞かせる
・仕事の中に面白さを発見し,殻を破る
・終わった後に,「やったぁ!」と喜び,達成感を得る

図2●悪魔のスパイラルからの脱出スパイラル
図2●悪魔のスパイラルからの脱出スパイラル

 一度,旅行にでも出かけて,広い海や湖,山などの広大な自然を前にして,仕事のもやもやを忘れてみてください。そして,あなたの人生にとって,目前の苦労などはほんのわずかな期間のことだ,と割り切るのです。

 エンジニアは常に修行を積んでスキルを向上させなければならない職人です。特に,20歳代は“お寺の小僧”のようなものです。つまり,あなたの現状は「こんなものさ」程度の当たり前の話なのです。

 そして,これは私が若いころに実践したことですが,「自分はできる」と言い聞かせるのです。私は就寝前に,横になってリラックスできる状態で,お経のように繰り返し「大丈夫,自分ならできる」と心の中で唱えました。そこには何の理由もありません。ただひたすら心の中で唱えることを数カ月繰り返すと,何となくそんな自己暗示がかけられるのです。

 そうして新しい仕事にチャレンジしていくと,その中に「あれっ,これ面白いな」というものが必ず出てきます。新しい技術,仕事の進め方,何でもよいのです。若いころは,新しい仕事には新しい発見が必ずあるものなのです。

 例えば,私が日本IBM時代に海外との仕事を任されたとき,私は英語が下手で随分と外人や上司からも怒られました。その時は,自己暗示をかけてとにかく逃げず,下手な英語で技術的なやりとりをしている中で,外人が使うビジネス英語の俗語に気がついたのです。

 例えば私のように会議で黙っている人間は「empty suites」つまり空のスーツが座っていると言われました。そんな俗語を集めてリストアップしていたら,外人たちが面白がって色々と教えてくれるようになったのです。

 それからです。分からないことがあったら遠慮なく下手な英語で聞きまくれるようになったのです。外人たちは丁寧に教えてくれるようになり,仕事も何とか進みました。プロジェクト終了時のホームパーティで外人が「お前は英語も技術もないくせによく頑張った」と褒めてくれたときには,「やったぁ!」と一人悦に入ったものです。

 このように,とにかく逃げずに,自己暗示をかけてでもやり抜くと,必ず良いことが待っているのです。あなたも,ぜひとも試してみてください。